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2005.03.21

渇いた心に響く本

年末だったか年始だったかに買い込んでいた本がまだ2冊ほど残っているにも関わらず、ついそれを持って行くのを忘れて、それでも本が手元にないとカウンターで酒を飲めない私は、JR大阪駅御堂筋口にある「book studio」で本を探し、それを今回の東京行きの往路で読み終えた。
よい本だった。

今年に入って、既に「考える胃袋」という、星5つの本を読んで随分満足しているのだが、今回読んだ「パンダの死体はよみがえる」も実に素晴らしいものだった。
動物、それも哺乳類(コウモリやモグラからパンダ、そしてゾウまで)の遺体を扱い、自らのフィールドを「遺体科学」と称する著者の文章は、実に文学的だ。このような才能が加わった京都大学霊長類研究所は実に幸せだと思う。

往きでこの本を読み終えた私は、大阪への帰途につく朝、歌舞伎町のホテルを出てから、まず新宿の紀伊国屋に向かった。10時の開店には少し間があったが、既に店の正面ではワゴンセールが始まっており、少々驚いた。
地下を少しうろうろしていたら10時を回り、それから店内に入ってあれこれ物色するものの、これぞというものが見当たらない。
少し焦っていた私の目に、「武満徹」という文字が飛び込んできた。
次の瞬間には、私はその本~「武満徹-その音楽地図」~を手に取ってレジに向かっていた。

MIDが世を去ってから、iPodで聴くのは何故かクラシックばかり。
そもそもiPodに入っている約2週間分の音楽データのうち、10日分ぐらいはクラシックなのだから、それは不思議ではないのだが、それまでは何も気にせずに聴いていたアイリッシュや遊佐さんやモダンチョキチョキズやVita Novaやケパ・フンケラやタブラトゥーラやキング・クリムゾンやゲルニカを、どうしても聴く気になれなくなってしまったのである。
しかし、今回の「お気楽」に行ったら、それが終わったら、無理をしてでも聴こう、そうでなくては前に進めない・・・そんな気持ちになっていたところ、オフの反省会でS.D.Gさんからケルトとヴィヴァルディの融合という興味深いものを聴かせていただき、あまりの面白さに、何が何でも帰りはアイリッシュを聴いて行くのだ、と決意した私なのであった。

12時56分、こだまでの4時間の旅は、"Irish Collection"と銘打ったプレイリストと、小沼氏の著書を供として動き始める。そして、ほんの5分もしないうちに、アルタンのマレードさんの歌声に包まれた私の目は、微妙に霞み始めたのだった。4ヵ月以上離れていたケルトの響きと、武満徹を語る小沼氏の文章(特に「小さな空」を巡るくだり)と、どちらがどう作用したのかわからない。いやそれだけではないだろう。昨夜のブラームス、フォーレ、ベートーヴェンが、そしてそれらを共につくり上げた仲間たちの姿が、そしてMIDの面影が、全てないまぜになって、一陣のつむじ風のように、私の胸に去来したのかも知れない。両脇にべっぴんのおねぃさんがいたりしなかったら、どうなっていたか、自分でも想像できない。

昼前から2本の地ビールを飲み、さらに新幹線を待つ間に、あまり上手とは言えない注ぎ方だったとは言え、そしてプラスチックのコップだったとは言え、ドラフトギネスを1パイントほど飲み、さらに「ぷらっとこだま」の特典であるドリンク1本サービスで買ったサッポロ黒ラベルを飲み干した私は、新富士の駅に着いたことまでは記憶があるが、あとは半醒半睡状態。途中でアルタンからシャロン・シャノンに変わり、再びアルタン、次いでデジー・オハロランおぢさん、またアルタン、そして最後にシャロン・シャノンときて、Phil Cunningham Setと共に新大阪に降り立つ。少し腰は痛いのだが、何だか満ち足りた旅路だった。アイリッシュもいい。そして武満もまた。

2005 03 21 11:54 PM [Book List, music with iPod, ] | 固定リンク

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コメント

「パンダの死体はよみがえる」の著者、遠藤秀紀です。嬉しい言葉で評価してくださって、感謝の至りです。この先も遺体の仕事に力を注ぎます。ぜひ応援してください。遠藤秀紀

投稿者: 遠藤秀紀 (26-ago-05 18:39:18)

遠藤さん(^_^)
うわ、驚きました。そして、コメントありがとうございます!
ブログで、面識のない方のこと(あるいはそのお仕事)を取り上げて、直接そのご本人からコメントをいただいたのは、実は遠藤さんで二人目なのですが、やはり驚きです(^_^)
最初の象の解体場面から、もう本当にグイグイと引き込まれました。そして、文章そのものの流麗さもさることながら、確固とした信念に基づいて、地道で、日の当たりにくい分野で、日夜選り好みせずに実績を積み上げておられる姿には、本当に深い感銘を受けた次第です。
これからもまた素晴らしい成果を挙げられますよう、応援しております(^o^)

投稿者: ちいしゃ (27-ago-05 01:39:44)

ちいしゃ様。遠藤です。ハハハ。お化けではありません。どうぞあまり驚かないように。いつでも京大に連絡をくださればお目にかかることができますので。本なるものが真に好きな方の書評は、読んでいて清清しいものです。ありがとうございました。「パンダの死体はよみがえる」は、私のごく普通の日々を、思うままに散らしたもの。考えれば、死んだ動物相手に愉しい毎日を過ごしているといえます。次作、次々作と、また世に送りたいと思っていますので、どうぞ応援してください。どうぞお元気で。

投稿者: 遠藤秀紀 (27-ago-05 11:06:07)

遠藤さん(^_^)
ありがとうございます(_ _)(^_^)
次作以降も非常に楽しみです。
niftyBOOKSで遠藤さんの他の著書も探してみました。「闘う解剖学者」なんていうニックネームも拝見しましたよ(^o^)
これからも健「闘」を期待しております!(^_^)

投稿者: ちいしゃ (27-ago-05 12:15:43)

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