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2006.07.26

発しようが達しようが

今年も恒例の調査結果が出た模様。

国語調査:「怒り心頭に発する」を「達する」と誤用多く-今日の話題:MSN毎日インタラクティブ

調査は結構なことであるし、その結果はなかなか興味深い。
問題は、それに対する「識者のコメント」なるやつであろう。

今日は休みだったので、割と早い時間帯からTVのニュースなども観ていたが、某局は某スカポンタンに意見を求めていた。そしてこのスカポンタン、「危機的状況である」などとのたまう。

言葉の使い方が昔と違ってきている、違った言い回しが広まっている、まるで反対の意味になってしまっている・・・などなど、言葉をめぐっては様々なことが起きていて、様々な人がそれについて言及している(こうしてブログに書いている私も多分その一人ということになるのだろう)

「国語」だとか「日本語」だとかいうレベルで言葉を考えて、あまりに甚だしい逸脱は困る、とか、変わらないことが望ましい、などというのは、実に官僚的で、言語を功利的な観点でしか見ていないように思う。「昔の日本語は美しかった」「そういう美しかった日本語を声に出して読みましょう」などという輩は、まぁ官僚どもの格好のアドバルーン役を、自発的にか、結託してか知らないが、担っていると言わざるを得ない。
某局が某スカポンタンに意見を求めるのは、官僚的視点を強化するという意味では、多分妥当な人選なのだが、しかしそれは視点を変えればただの自家撞着でしかない。

日常生活の中で・・・それはビジネスであろうが、プライベートであろうが、現実に生きている人間がコミュニケーションのために用いている言葉は、「国語」だとか「日本語」だとかいうレベルで規範と化し、ある意味現実と遊離してしまっているものとは、また違ったものなのだと思う。そう、言うなれば、両者は乖離していくのが自然状態なのだ。

日常生活の中で接する言葉の中に、「その言い方は何か違和感あるなぁ」とか「もうちょいすっきりした言い方があるんとちゃうん?」などと思うことは多々ある。しかしそれは「国語」として、とか、「日本語」として、正しくない/逸脱している、というよりは、自分がこれまでの日常生活の中で使い、接してきたものとの比較においての話である。自分ではそういう言い回しはするまいと思い、あるいはこういう場で「これっておかしいよね」と書いてみたところで、それは自分の中にある尺度、いわばベンチマークとの乖離(トラッキングエラーですね(笑))を再確認しているに過ぎない。

百歩譲って、そういう個々人がもっているベンチマークが、何らかの形で官製の「国語」の影響から免れる訳ではない、ということを認めたとしても、理念として「不変にして普遍」であるところの「国語」とは、乖離していくのが自然なのである。官製「国語」に仮託して、日常生活で用いられる言葉を論評するのは、生活者の視点を欠いた、傲慢なものでしかないように思う。
そして、このニュースを伝えるときに、そのようなスカポンタンの意見しか伝えない放送局の、言葉に対する認識というものも、残念ながら極めて硬直したものなのではないか、と疑わざるを得ない。

2006 07 26 09:53 PM [ことば] | 固定リンク

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コメント

あんなスカポンタンのことはほっときましょう。わたくしも「危機的な状況で」ってのたまったときは「こいつはやっぱりアホじゃ」と思ってしまったよ。
言葉はどんどん進歩し発展し、時には省略され、誤用がそのまま活かされていき・・・と変化していくのがあたりまえやのに、専門家のくせに「危機的な状況」の一言ですますのはアホの証明か、国民をアホと思ってるかのどっちかでしょうなあ。
近い将来「達する」でも「発する」でも正しい、ということになるでしょう。だからなんやねん。と言いたい。

あ、仕事中やのに、思わず書いてしまったよ(^◎^;)

投稿者: たこぶ(^◎^) (27-jul-06 14:58:28)

たこぶ師匠(^_^)
コメントありがとうございます。
多分、三色ボールペンの宣伝費用だけでは食えなかったのでしょう、あの御仁は。

例えば、今、「ここはまさに彼の独擅場であった」と書き、きちんと読める人がいますか? というような話もありますよね。
限りなく100%に近い人が「独壇場」と書き(と言うか、書ける人は少ないか(^_^;))、「どくだんじょう」と読む、それが言葉の移り変わりというものですよね。

投稿者: ちいしゃ (27-jul-06 22:36:47)

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