« 一瞬の風 | トップページ | 小整理:沈黙の音楽は繰り返す »

2008.05.25

沈黙の音楽

何気なくワルティに立ち寄ったその日、モンポウの「沈黙の音楽(Musica Callada)」を高橋悠治が演奏したCDが私を呼んでいたので手に取る。なんと、この日が発売日。
ハイブリッドSACDらしいのだが、高橋兄の演奏でモンポウという取り合わせの妙と、発売日に見つけてしまった縁というものを感じて購入。

一緒に買ったのはナクソスばかりで、ベルリオーズ「幻想交響曲」のリスト編曲版、ポール・デュカスのピアノソナタなど、バスクの作曲家・ドノスティアのピアノ作品・・・とピアノものばかり。よくあることだが。

モンポウのピアノ小品というと、「内なる印象」や「歌と踊り」を思い浮かべるが、この「沈黙の音楽」は、これまで音源が殆どなかったらしい。モンポウの自演盤(全集版)に入っているぐらいとか。第4巻の初演者にして献呈を受けてもいるラローチャですら、その第4巻以外は収録していない(…と思う)
実は熊本マリさんの録音というのもあるようなのだが・・・

演奏している高橋悠治の姿を見たことは二度あって、一度目は高校時代に甲斐説宗追悼コンサートで、甲斐の名曲「ピアノのための音楽」を生で「観れた」という貴重な機会だった。
二度目は大学時代、大隈講堂裏のプレハブの部室長屋(ワタシが所属していたサークルの部室もそこにあった。隣が鴻上某率いる盗人集団のアジト。ちなみに今は既にこの部室長屋は存在しない)の前の仮設テントの中で、水牛楽団の主宰者として大正琴を演奏していた姿を間近に観た。同じ長屋の「音楽同攻会」主催のイベントであった。

どちらにしても、そんな高橋兄が、どうやってこの後期のモンポウの、極めて個人的で、思索的と言える作品に辿り着いたのか、実に興味深い。

そしてそれ以上に、モンポウに惚れ直した、というところだろう。「内なる印象」よりもさらに音数は減り、単純な中に深い内的宇宙を感じさせる。
28曲中12曲に速度標語として「Lento」が指定されており、それ以外も「Tranquillo」や「Calme」など、抑制された表現を求める指定がある。
そう言えばタイトルからして、禅的な世界を想起するものだが、一つ一つの作品にも精進料理の一皿のような趣がある。

思えば、この作品が書かれた1959年~1967年という時期、武満徹は既に「遮られない休息」を発表した後である。ジャンケレヴィッチはモンポウの作品にサティの影響を指摘したそうだが、影響のあるなしや音楽としての類似性の有無に関わらず、「Lento」の多用と音楽の静謐さを思うと、武満の上掲作や「二つのレント」を連想せざるを得ない。

こってり、ずっしりした音楽に倦んだとき、尖った音楽に疲れたとき、「沈黙の音楽」に耳を傾けてみる、というのは、大変よい、と思う。

2008 05 25 11:57 AM [音楽] | 固定リンク

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/6325/42476580

この記事へのトラックバック一覧です: 沈黙の音楽:

コメント

コメントを書く